インバウンド向けのSNS運用では、「日本語のコンテンツを韓国語に翻訳すれば届く」と考えられがちです。しかし、JAPANKURU(訪日・在留外国人向けの多言語メディア)韓国アカウントの運用データから繰り返し見えてくるのは、翻訳の正確さよりも「コンテンツの組み立て方」そのものが反応を左右する、という点です。
言葉づかい(コピー)そのものの違いについては、近日公開予定の別稿であらためて扱います。本稿ではもう一つの層——複数のカードや数秒の映像を、どう構成するか——を取り上げます。トレンドの紹介ではなく、日本のマーケターが自社コンテンツを韓国向けに調整する際に見直せるポイントとして整理します。
なお本稿も、コピー編と同じく「こう作るべき」という基準ではなく、運用の中で観察されたパターンの共有として読んでいただければと思います。また以下はあくまで「情報を伝えるタイプのコンテンツ」を前提とした話です。ミームやチャレンジ系では音源選定など別の要素が重要になるため、ここでの原則がそのまま当てはまるわけではない点は、あらかじめお断りしておきます。
共通する原則:「音声なしで読ませる」
まず前提として、リールを音声なしで見るユーザーが少なくありません。そのためJAPANKURUの韓国向けコンテンツでは、「映像を眺めさせる」よりも「テキストで情報を読ませる」ことを軸に構成されています。
この発想は、リールにもカルーセルにも共通します。以下、それぞれの構成の作り方を見ていきます。
リールの構成 — 最初の3秒に、すべてを賭ける
冒頭3秒のフック
運用の現場で最も重視されているのが、冒頭3秒です。ここで離脱されるかどうかが、その後の再生数を大きく左右すると見られるためです。
フックは一種類ではなく、複数の要素を組み合わせています。具体的には、ビジュアルによるフック(画面そのものの引き)、字幕によるフック、ナレーション(メント)によるフック、そして編集によるフック(速いカット転換、テキスト効果など)です。短く見たときに「物足りない」と感じさせず、視聴者がとどまれるだけの要素を、複数重ねて設計します。
フックの「型」も、単に刺激的な表現に頼るのではなく、内容に合わせて使い分けています。たとえばクイズ形式、あるいは「これは○○?それとも△△?」のように認知的なズレ(好奇心)を生む問いかけ型のフックなどです。
字幕は「短く」
韓国向けリールでは、字幕をできるだけ短くします。特に冒頭の字幕が2行を超えると、フックが弱まり初期離脱が起きやすくなるためです。核心だけを素早く伝える構成を優先しています。
多言語アカウントの場合、レイアウト上すべての言語の字幕を十分に入れるのは難しいことが多いのですが、韓国向けコンテンツでは字幕を積極的に活用しています。
TTS(音声読み上げ)の活用
JAPANKURUのコンテンツは、その多くが「説明を含む情報型」です。そのため、ミームや音楽が主役のコンテンツとは異なり、TTS(テキスト読み上げ)を併用して情報の伝達力を高めています。
カルーセルの構成 — 「読む」コンテンツとして設計する
インフルエンサー型ではなく「マガジン型」のカルーセルは、写真をただ眺めて送っていくコンテンツではなく、情報を読むコンテンツとして消費される場合が多くあります。そのため、テキストの構成にも力を入れています。
あるプレミアムデザート空間を紹介したカルーセルを例に、その構造を抽象化すると、次の4層が見えてきます。
<<ここに構成モデルの図(カバー→分解カード→要約→保存CTA)を挿入>>
① カバー:呼びかけ型フック
先頭の一枚は、不特定多数にではなく「特定の趣味層」を名指しで呼び込む形が多く見られます。「デザート好き集まれ」のように対象を絞り込むことで、まず「自分向けの投稿だ」と感じてもらう狙いです。
② 分解カード:場所を要素ごとに割る
一つの場所を一枚でまとめて紹介するのではなく、「2階のティーサロン」「1階のケーキショップ」「地下の食品フロア」のように、フロアやカテゴリー単位に分解して各カードに配分します。リールが一つの流れで見せるのに対し、カルーセルは分解・並列で「読ませる」——この違いが構成設計の核になっているように見えます。各カードは[位置・カテゴリーのラベル]+[短い説明+感嘆の一言]というほぼ共通の型を取っています。
③ 要約カード:全体をまとめる一言
最後に「ここに全部そろっている」といった総括の一枚を置き、読者に「保存しておく理由」を与えます。
④ キャプション:保存誘導のCTA
キャプション冒頭に「〜好きならここ保存必須」といった一文を置くのも特徴です。日本語のキャプションでは「保存推奨」を明示する習慣が比較的弱いのに対し、韓国式は保存数(アルゴリズム上の重要指標)を狙って、保存を直接的に促します。これはコピーのトーンというより、KPIを意識した構成上の設計だと考えられます。

リールもカルーセルも、韓国向けコンテンツに共通するのは、「映像を眺めさせる」のではなく「テキストで読ませる」という一点です。冒頭3秒での複数フック、2行を超えない字幕、情報型コンテンツでのTTS併用、カルーセルの分解構成と保存CTA——これらはいずれも、正しく翻訳するだけでは再現できない設計上の判断だと言えます。
自社コンテンツを韓国向けに展開する際は、まずリールの冒頭3秒を「字幕だけで意味が伝わるか」という視点で見直す、あるいはカルーセルの先頭一枚を「誰に呼びかけているか」という視点で作り直してみるところから始めると、反応の変化を確認しやすいかもしれません。