「韓国人はゴルフが好きだ」という話を、一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。それは単なるイメージではなく、実際の市場規模や利用者数からも確認することができます。
ユウォンゴルフ財団とソウル大学スポーツ産業研究センターがまとめた『韓国ゴルフ産業白書2024』によると、韓国のゴルフ人口は2023年時点で700万人を超え、ゴルフ市場の規模は22兆4,330億ウォンに達しました。フィールドゴルフだけでなく、都市部で気軽に楽しめるスクリーンゴルフ、ゴルフ用品、レッスン、関連サービスなども含め、ゴルフは韓国社会に広く浸透した一大レジャー産業となっています。
実際のゴルフ場利用も、依然として高い水準にあります。韓国ゴルフ場経営協会によると、2025年に韓国国内のゴルフ場を訪れた延べ利用者数は約4,641万人でした。前年からはわずかに減少したものの、人口約5,000万人の国で年間4,000万人を超える利用があることからも、ゴルフが一部の愛好家だけのものではなく、多くの人に繰り返し楽しまれていることが分かります。
韓国では、実際のコースへ行かない日にもスクリーンゴルフでプレーを楽しみ、休日には友人や夫婦、仕事仲間とゴルフ場を訪れるというスタイルが定着しています。ゴルフは単なるスポーツというよりも、余暇、交流、旅行、買い物を伴う生活文化の一つになっているといえるでしょう。
このように厚いゴルフ人口を持つ韓国では、国内だけでなく、より良い気候やコース環境、価格、非日常的な景観を求めて海外へ出かけるゴルファーも多くいます。東南アジアのリゾートコース、中国の広大なゴルフ場、オーストラリアやハワイの名門コースなど、韓国人ゴルファーが選ぶ海外の目的地は幅広くあります。
かつては、その中で特定の国だけが圧倒的に選ばれていたわけではありません。

図注:NAVER期間内の最高値を100とした相対的な検索指数。「日本ゴルフ旅行」「中国ゴルフ旅行」「ニャチャンゴルフ旅行」「海外ゴルフツアー」を比較。
検索動向を見ると、2021年頃には国名を指定しない「海外ゴルフツアー」というキーワードが、「日本ゴルフ旅行」や「中国ゴルフ旅行」よりも高い検索指数を示していた時期がありました。当時は海外でゴルフを楽しみたいという需要は存在していたものの、「海外ゴルフといえばこの国」という明確な第一候補は、まだ形成されていなかったと考えられます。
しかし、2022年以降、その状況は大きく変化しました。数ある海外ゴルフ旅行先の中で急速に存在感を高め、韓国人にとって代表的な目的地となったのが日本です。
検索トレンドを見ると、2021年頃までは「海外ゴルフツアー」という一般的なキーワードが、「日本ゴルフ旅行」や「中国ゴルフ旅行」よりも高い時期がありました。これは当時、韓国人ゴルファーの間で「海外でゴルフをする」という需要は存在していたものの、特定の国が圧倒的な第一候補になっていたわけではないことを示しています。
ところが、2022年後半から「日本ゴルフ旅行」の検索指数が急上昇し、一時は指数100に到達しました。その後も変動しながら高い水準を維持しており、ほかの目的地をおおむね上回っています。検索行動だけを見れば、韓国人にとって「海外ゴルフ」と聞いた際に、日本が最初に想起される状態に近づいたと考えられます。
背景には、コロナ禍で抑えられていた海外旅行需要の反動に加え、日本の近さ、コース環境の良さ、比較的利用しやすい料金、円安局面が長く続いたことなどがあります。北海道の夏季ゴルフ、九州の冬季ゴルフなど、季節に応じて行き先を選べることも大きな魅力です。さらに、2~3人の小規模旅行や2人ラウンドなど、日程を自由に組み立てるゴルフ旅行が増える中、短いフライトで繰り返し訪問できる日本は相性の良い目的地といえます。韓国では以前から、海外ゴルフの個別手配や少人数旅行への関心が拡大しています。
日本の場合、ゴルフだけで旅行を終わらせる必要はありません。名門コースでのラウンドに、温泉旅館、地域の食、ドライブ、小都市観光などを組み合わせることができます。香川県では、空港・ゴルフ場・ホテルを結ぶ外国人向けの移動サービスが導入され、約12のゴルフ場と連携するなど、地方の弱点になりやすい二次交通を含めた受け入れ環境も整備され始めています。
一方、2025年以降は「中国ゴルフ旅行」の検索指数も大きく伸びています。広大なコースや価格競争力に加え、韓国の一般旅券保有者が観光目的で中国に30日以内滞在する場合、2026年末まで査証なしで入国できることも追い風となっています。中国・煙台では、観光や食体験を組み込んだ300人規模の海外パークゴルフ大会も企画されています。
ただし、検索トレンドを見ると、中国が急伸した時期においても、日本は全体としてより安定した水準を保っています。中国が価格や規模、団体イベントなどで需要を獲得しているのに対し、日本は「近距離」「品質」「季節の多様性」「温泉や観光との組み合わせ」「再訪のしやすさ」といった複数の強みを持っています。単純な安さだけでなく、旅行全体の満足度で選ばれていることが、日本の安定性につながっていると考えられます。
韓国のゴルフ旅行市場は、一般ゴルフだけでなく、シニア層を中心とするパークゴルフによっても裾野が広がっています。韓国のパークゴルフ場は2021年の308カ所から2026年1月には564カ所へ増加し、協会登録会員も2022年の約10万6,500人から2025年末には約22万9,700人へ拡大しました。旅行会社も、ラウンドだけでなく、大会、地域文化、現地交流などを組み合わせた商品開発を進めています。
この市場を日本のインバウンド施策につなげるためには、ゴルフ場を単独で宣伝するだけでは十分ではありません。「2泊3日でどのコースを回り、どこに泊まり、ラウンド後に何を食べ、何を買うか」までを一つの体験として設計する必要があります。
ゴルフ場とホテル、温泉施設、飲食店、小売店が連携し、韓国人ゴルファー向けの周遊ルートを作ることができれば、ゴルフ用品やウェアだけでなく、日焼け対策商品、ボディケア、疲労対策商品、食品、酒類、地域限定土産などにも購買機会が広がります。ブランド側にとっても、単なる広告出稿にとどまらず、試用、ラウンド、宿泊、買い物をつなげた共同施策を展開しやすくなります。
検索指数が示しているのは、日本のゴルフ場が人気であるということだけではありません。韓国人にとって日本が、ゴルフを目的に何度も訪れることのできる身近な海外旅行先になったということです。今後は「日本でゴルフをする人」を集める段階から、「ゴルフを起点に地域全体で消費してもらう」段階へ進むことが、日本のゴルフツーリズム市場をさらに成長させる鍵となります。