世界的に生成AIの利用が広がる中、中国市場は他国と異なる前提で発展しております。ChatGPTやGeminiなどの海外AIが浸透しにくい一方、豆包・千問・DeepSeekといった国内AIが急速に生活へ入り込んでおります。注目すべきは「どのAIが優れているか」ではなく、「どのAIが生活のどの場面に定着しているか」です。
海外AIが定着しにくい市場
日本や欧米でAIといえば、ChatGPTやClaude、Geminiが思い浮かびます。しかし中国本土ではこれらの利用に制限があり、VPNなど一定の手間が必要となるため、一般ユーザーにとって自然な選択肢にはなりにくいのが実情です。
その一方で、豆包・千問・DeepSeekといった国内AIアプリは性能的にだけでなく、AIの数も急速に成長しております。
AIはすでに生活導線に組み込まれている
中国のAIアプリ市場は一時的なブームではなく、生活インフラ化に向かっています。2026年3月時点で、中国のAIアプリ全体のユーザー規模は4.46億人に達しました。主要アプリでは豆包がMAU3.45億で首位、千問がMAU1.66億で2位、DeepSeekがMAU1.27億で3位につけています。
この規模が示すのは、AIがテック層やビジネス層だけのものではなく、すでに幅広い生活者層へ届いているという事実です。日本で、AI活用といえば文章作成や翻訳、業務効率化を思い浮かべがちですが、中国ではAIがより生活に近い場面で使われています。日常の相談、買い物の補助、旅行計画、デリバリー、コンテンツ生成、学習、仕事の資料作成——用途はすでに多岐にわたります。
特に注目すべきは、AIアプリが単体で存在するのではなく、場合によってはSNS・EC・外売・旅行・地図・オフィスツールといった既存の巨大プラットフォームと結びついている点です。AIはその基盤の上に乗ることで、単なる会話ツールではなく、生活そのものを支援する存在になりつつあります。

検索行動が示す「関心の定着」
2026年2月、「AI」関連の検索指数は半年内で最高水準となり、2月15日には10,435というピークを記録いたしました。検索結果数も196件から211件へ増加しております。
これは、AIが話題で終わらず、ユーザー自身が比較し、実際に使ってみる段階に入ったことを示しております。市場は話題性の段階から、利用定着の段階へ進んでおります。

豆包・千問・DeepSeekという三つの役割
現在の中国AIアプリ市場を見るうえでまず押さえるべきは、豆包・千問・DeepSeekの3サービスです。2026年3月にのデータによりますと、中国AIアプリのランキングをみると、この三つのアプリがTOP1~3の位置にあります。
この3サービスは、優劣で比較するより、使われ方の違いで捉えるとわかりやすくなります。
豆包は生活相談やコンテンツ生成に強い「生活伴走型AI」で、抖音(中国現地版TICTOK)を情報元としており、幅広い層に届いております。
千問はAlibaba生態系と結びつき、買い物・デリバリー・旅行など生活の用事をこなす「生活タスク型AI」として使えるのが強みになります。2025年11月の公開後、急速に利用が伸びました。
DeepSeekは推論やコード生成に強い「思考・分析型AI」として、仕事・研究など複雑なタスクをこなせる点から仕事場などで高く評価されています。
ユーザーは一つのAIに頼るのではなく、用途ごとに複数のAIを使い分け始めております。

企業・自治体・観光事業者への示唆
中国AI市場の発展は、日本企業や自治体、観光関連事業者にとっても無関係ではありません。中国人旅行者や中国市場向けの消費者は、今後AIを使って情報収集し、比較し、行動を決める場面が増えていくと考えられます。
そのとき、企業や地域の情報は、従来の検索エンジンやSNSだけでなく、AIを通じて見られる可能性があります。旅行先を探す、商品を調べる、飲食店を選ぶ、旅程を組む、SNS投稿文を作る、撮影スポットを相談する――こうした行動の入口が変われば、情報発信側に求められる準備も変わっていきます。
重要なのは、AIを単なる新しい検索ツールとして捉えるのではなく、生活者の意思決定を支援する接点として見ることです。中国向けの情報発信では、認知を広げるだけでなく、ユーザーがAIに相談したときに、正しく理解され、比較され、候補に入りやすい情報環境を整えていく必要があります。
つまり、今後の中国向け施策では、「どこで発信するか」だけでなく、「AIや各種プラットフォームにどのように参照されるか」という視点も欠かせなくなっていきます。
まとめ
中国AI市場を理解するうえで重要なのは、単に「どのAIアプリが伸びているか」ではなく、各AIがどの生活シーンで使われ、ユーザーの意思決定にどう影響しているかを見ることです。
今後、中国向けの情報発信や訪日インバウンド施策では、SNSや検索エンジンだけでなく、AIに参照されやすい情報環境を整える視点が欠かせません。公式情報を翻訳するだけではなく、中国語圏ユーザーが検索・相談・比較しやすい形で情報を整理し、SNS、口コミ、記事、地図、EC、旅行情報など複数の接点に蓄積していくことが重要です。
中国AI市場は変化が速く、プラットフォームごとの役割も日々更新されています。当社では、中国向け情報発信、SNS・口コミ分析、インバウンド施策設計に関する支援実績があります。中国AI時代に合わせた情報設計にご関心がございましたら、お気軽にご相談ください。
データ出典元:Wechat―AI産業観察者、Wechat―点点编辑部