中国の健康食品市場で、「低糖・無糖」と「抗炎」をキーワードにした消費が拡大しています。中国の消費研究機関・勤策消費研究などのレポートによると、2026年の中国低糖・無糖食品市場は約4,500億元、機能性抗炎食品市場は約800億元に達する見込みで、両領域を合わせた市場規模は5,300億元を超えるとされています。

これまで「低糖」「無糖」は、商品の差別化ポイントとして語られることが多いものでした。しかし現在の中国市場では、健康志向の高まりとともに、糖分の少なさが“選ばれるための基本条件”になりつつあります。同レポートでは、68%の消費者が商品購入時に糖含有量を確認し、35%が低糖配合の商品に対して10〜20%の価格プレミアムを支払う意向があるとされています。

この動きは、飲料だけに限られません。無糖飲料はすでに一定の市場規模を持つ成熟カテゴリになりつつありますが、低糖スナック、低糖ベーカリー、低糖乳製品、低糖調味料など、日常的に口にする食品全体へ広がっています。特に低糖スナックや低糖ベーカリーは成長率が高く、「おいしいが、罪悪感が少ない」商品への需要が強まっています。

一方で、近年新たに注目されているのが「抗炎」領域です。中国では、抗炎という言葉が医療的な意味だけでなく、美容、肌管理、体重管理、疲労回復、エイジングケアと結びついて語られるようになっています。レポートでは、機能性抗炎食品市場はまだ成長初期にあり、抗炎果汁、抗炎グミ、姜黄素サプリメントなどが若年層を中心に広がっているとされています。

消費者側の変化も明確です。Z世代は低糖・抗炎消費の中心層とされ、52%が低糖商品を自発的に購入し、37%が抗炎飲食について理解しているとされています。彼らの関心は、単なる病気予防ではなく、体重管理や肌管理に向いています。つまり、中国の若年層にとって低糖・抗炎は、「健康のために我慢するもの」ではなく、「きれいになりたい」「太りにくくしたい」「肌の調子を整えたい」といった自己管理型の消費に近づいています。

購入動機を見ても、体重管理が35%、肌管理が24%とされ、疾病予防や体力管理よりも、美容・見た目・日常コンディションに近いニーズが前面に出ています。この点は、中国市場を狙う日本企業にとって重要です。中国消費者に健康食品を訴求する場合、単に「健康に良い」と伝えるだけでは弱くなっています。どの生活シーンで、どの悩みに対して、どのような変化を期待できるのかまで整理する必要があります。

政策面でも、低糖・健康化の流れは後押しされています。中国では「健康中国行動(2019-2030)」の中で減糖が重要テーマのひとつとして位置付けられており、食品表示や栄養表示に関する基準整備も進んでいます。今後は「無糖」表示や機能性訴求に対する規制・審査がさらに厳しくなる可能性があり、ブランド側には成分表示、科学的根拠、第三者検査など、より透明性の高い情報発信が求められます。

同レポートでは、73%の消費者が配料表を細かく確認し、58%が成分が不透明なため購入をやめた経験があるとされています。これは、中国消費者が単なるキャッチコピーではなく、糖含有量、代糖の種類、機能性成分の含有量、原料の由来などを見て判断するようになっていることを示しています。

また、味への要求も高まっています。62%の消費者が「おいしくなければ、どれだけ健康でもリピートしない」と回答しており、「健康食品=まずい」という前提は通用しにくくなっています。低糖・無糖商品であっても、味、見た目、パッケージ、食べやすさ、SNSで共有したくなる体験がなければ、継続購入にはつながりません。

剤型や形態にも変化が見られます。従来の錠剤やカプセルだけでなく、グミ、即飲ボトル、個包装タイプなど、若年層が日常的に取り入れやすい形態が伸びています。特にグミや即飲タイプは、「保健品を飲んでいる」という感覚を弱め、間食や美容習慣の延長として受け入れられやすい点が特徴です。

競争環境を見ると、無糖飲料のような成熟領域ではすでに頭部ブランドが存在する一方、抗炎食品や低糖ベーカリー、低糖スナックなどはまだブランド集中度が低く、新興ブランドにもチャンスが残されています。中国ブランドでは、元気森林、WonderLab、minayo、好利来、HeyJuiceなどが、それぞれ無糖飲料、口服美容、抗糖・抗炎グミ、低糖ベーカリー、抗炎果汁などの領域で存在感を高めています。

日本企業にとって、この市場は単なる「健康食品ブーム」として見るべきではありません。中国では今、低糖・無糖が基礎的な購買基準となり、抗炎が美容・体重管理・日常コンディションを支える新しい消費キーワードとして広がっています。

そのため、中国向けに食品、飲料、サプリメント、菓子、調味料、美容系食品を展開する場合は、「日本品質」や「安心安全」だけでなく、糖質、成分、機能、生活シーン、味、見た目まで含めて設計する必要があります。

中国の低糖・抗炎市場は、規模の拡大だけでなく、消費者の目が厳しくなっている点にも注目すべきです。成分の透明性、科学的な根拠、食べ続けたくなる味、SNSで共有したくなる体験。これらを満たす商品が、今後の中国健康消費市場で支持を得ていくと考えられます。

出典元:勤策消費研究