中国で、海洋由来の医薬品・機能性食品に対する政策支援が強まっています。2026年5月、中国自然資源部、国家発展改革委員会、科技部、工業情報化部、国家衛生健康委員会、市場監督管理総局、国家中医薬局、国家薬品監督管理局の8部門は、「海洋薬物および機能製品の高品質発展を加速するための指導意見」を共同発表しました。

同政策は、中国が海洋生物医薬・機能性製品産業を国家戦略として強化していく方針を示したものです。2030年までに複数の海洋由来の革新的医薬品を上市し、関連産業の付加価値を1,300億元規模まで引き上げることを目標としています。

政策の中では、海洋保健食品についても言及されています。特に、抗酸化、記憶力改善、疲労軽減、免疫力向上といった消費者ニーズに対応する機能性食品の開発を支援するとしており、現代バイオ技術を活用した海洋食品産業の高度化が重点領域に位置付けられました。

この流れの中で、中国メディアが注目しているのが「オキアミオイル」です。オキアミオイルは、リン脂質型Omega-3やアスタキサンチンを含むことで知られ、中国ではこれまで「魚油より吸収されやすいOmega-3代替品」として、主に越境ECや輸入ブランドを中心に展開されてきました。

しかし今回の政策では、南極オキアミや微細藻類などの海洋資源の高付加価値化にも触れられており、オキアミオイルは「海洋資源」「機能性食品」「健康ニーズ」という複数の政策キーワードに重なる品類として再注目されています。

中国メディアの記事では、オキアミオイル市場がすでに成長傾向にあることも紹介されています。EarlyDataのモニタリングによると、2025年5月から2026年4月までのオキアミオイルの年間販売額は約11.3億元、2026年1〜4月の販売額は約3.6億元で、前年同期比21.2%増となりました。また、同品類は依然として輸入依存度が高く、越境ブランドが先行して市場を獲得しているとされています。

機能訴求を見ると、心脳血管健康が最も大きな訴求領域となっており、市場シェアは72.9%、成長率は23.6%とされています。さらに、抗酸化、心臓健康、エイジングケアなどの関連訴求も伸びており、若年層の「健康不安」や、SNS上での“熬夜”“過労”“突然死リスク”といった話題とも結びついていると分析されています。

ブランド面では、輸入ブランドのNYO3が33.5%のシェアで首位とされ、ノルウェーAker BioMarineの資源優位性や南極由来のトレーサビリティ、ORIVO認証などを強みに、消費者の信頼を獲得していると紹介されています。一方で、新興ブランドの中には急成長するケースもあり、越境ECを通じた「専門性のある健康訴求」と「精準なターゲティング」が、引き続き有効であることが示されています。

一方で、中国政府の政策が最終的に目指すのは、単なる輸入品拡大ではなく、海洋資源を活用した国内産業の高度化です。政策文書では、海洋生物原料の供給保障、南極オキアミなどの高付加価値利用、海洋新食品原料・保健食品新原料の開発、国産ブランド育成などが示されています。

つまり、現在は越境ブランドが先行しているものの、今後は中国国内企業による原料開発、機能性食品化、ブランド化が進む可能性があります。オキアミオイルは、これまで一部の健康意識層向けの輸入サプリメントという位置づけでしたが、政策支援を背景に、より広い消費者層に向けた機能性食品カテゴリへと成長する可能性があります。

日本企業にとっても、この動きは注目すべきです。中国では、健康食品や機能性素材において「政策が後押しする領域」「科学的根拠を語れる領域」「輸入品として信頼を得やすい領域」が、消費者の関心を集めやすくなっています。

特に、中国の健康食品市場では、単に「海外で人気」「高品質」と訴求するだけでは不十分です。どの政策トレンドと重なるのか、どの健康不安に応えるのか、どのような第三者認証や原料ストーリーを持つのかを整理し、中国消費者が理解しやすい形で発信することが重要になります。

オキアミオイルの事例は、越境ブランドが中国市場で先行優位を得る一方、政策によってカテゴリ全体の見え方が変わる可能性を示しています。中国消費者を狙う日本企業にとっても、今後は商品そのものの魅力だけでなく、中国の政策・健康トレンド・SNS上の消費者心理を合わせて読み解く視点が必要になりそうです。

出典元:EarlyData电商大数据、《关于加快海洋药物和功能制品高质量发展的指导意见》